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2018/01/04

【横浜市】土木事務所 下水道・公園係の浸水対策(連携・きめ細かな対策)

黒羽根課長補佐
横浜市旭区 課長補佐(旭土木事務所 
下水道・公園係長)黒羽根 能生
 





1.はじめに

 強く、しなやかな「竹」は、4年間は全然伸びずに、5年後に一気に伸びるそうで、4年間は、地中で根が成長しているそうです。人は、ともすると、目に見える部分で判断してしまいがちで、見えない部分は認知されにくい。下水道施設も同じような気がします。人の目に見えないところで、黙々と丈夫な「根」を張るような施工を行い、数年後、一気にその効果を発揮させる。施設が完成しても、特に下水道管路施設は、表に出る場面は少なく、しなやかに、様々な「浸水対策」「耐震対策」などの役割を粛々と、様々な節を乗り越えて、あたりまえのようにこなしていく。まさに「竹」のように、粛々と粘り強い役割を担い続けるライフラインだと思います。  

2.関係部局と連携した総合的な浸水対策

2-1.河川改修が完了していない川井橋周辺の被害状況(図-1)
 横浜市旭区川井本町にある川井橋周辺においては、川井橋の下流部までしか河川改修が進んでおらず、上流部の未改修区間において度々浸水被害が発生し、長年の懸案事項となっています。最近では、平成25 年4 月及び平成26 年10 月に浸水被害が発生しています。 帷子川本川の改修は、川井橋の直近下流まで進んでいますが、改修事業用地未取得の箇所には、移転準備を伴う工場や寺院等もあり、用地の取得完了には長い期間を要しています。
 あわせて、川井橋は、帷子川を国道16号及び横浜の水源である道志村からの水道管が埋設されている水道道が横断しており、河積を拡幅する工事を、平成26年度に行いましたが、水道本管の影響で、25cm下げるのが限界でした。 昨年の台風9号においては、幸い大きな被害はなかったものの、あと数cmで越水するところまで水位が上昇し、もう少し雨が降り続いたら溢れるところまでの状況を確認しました。
2-2.河川改修が完了するまでの対策(図-1)
 旭土木事務所では、風水害に対し、(1)日常点検により災害発生を未然に防ぐ(2)災害時の体制の確立(3)関係局と連携した浸水対策を図っていますが、即効性のある対策として、改修済みの個所より上流部において、以下の4つの即効性のある対策を総合的に進めます。特に今回のバイパス管整備は、将来河川整備が完了すると、廃線(一般下水道)となる区間において、下水道(内水)が、将来の本設利用も考慮し、暫定的に先行投資する形で行う整備で、内水(下水道)と外水(河川)が連携し、長年の懸案事項に対して、地域特性を考慮し、内水(下水)と外水(河川)が連携して、総合的な浸水対策を行うものです。
  対策①:バイパス管の整備
  帷子川の河川改修工事の完了地点と未改修部分の境においては、旧川の河積が狭くなっており、水が滞留してしまい、上流部で浸水被害が発生しています。平成26年度に、河積の拡大 
 工事(25cmの掘下げ)などの対策を行ってきましたが、河川改修が完了するまでの当面の暫定的対策として、上流の水を早期に下流の改修部に促す河川を縦断するバイパス管を推進工
 法にて施工する案を立案しました。現在、施工中です。
 対策②:周辺道路排水の強化
  水道道沿いに道路排水施設を新たに設置し、川井橋の下流に排水することで、国道16号の浸水を減らし、併せて、川井橋上流部(左岸側)に道路排水施設を新たに設置し、速やかな排
 水を促す施工を立案しました。(H28年度施工完了)
 対策③:若葉台遊水池(既存ストック)の有効活用
  放流口にゲートを設け、貯留量、放流量を制御。通常グランド等として地元に利用されているため、降雨終了後の速やかな排水を図る案を立案しました。
 (設計完了、発注契約手続き中)
 対策④:浸透街渠マスの整備
  対策③の若葉台遊水池周辺は、浸透適地であるため、老朽化した街渠マスの更新に合わせて、雨水浸透桝を整備します。(本年度より段階的に整備)

図-1 図-1 河川改修が完了するまでの4つの対策


























2-3.バイパス管の概要(図-2)
 バイパス管は、水道道の水道本管との離隔を確保すること、将来の河川改修高さとのすりつけを行うことから縦断を決定しました。暫定利用の期間は、吹上構造となることから、模型を作製し、(写真①)水の流れを確認しています。模型実験で得られた結果から、詳細部分について、より良い形での変更を図っていきます。
平面図
縦断図

 





























図-2 バイパス管の概要

模型実験
















写真① バイパス管の模型実験  

3.きめ細かな対策(落ち葉による浸水被害の解消に向けた街きょマス蓋)

 未改修区間のある帷子川を有し、市内でも最も水路が多い当区においては、日常の維持管理の強化に加え、既存ストックの評価及び最大限の有効活用を図り、あわせて、地域特性を活かした「きめ細かな対策」を進めています。

3-1 開発の経緯
 公園の樹木や街路樹等の落ち葉が街きょますの蓋に詰まってしまい、管きょへの取り込みを阻害し、浸水被害が発生している事例がよくみられます。
 本市では周辺に公園があるなど、落ち葉の多い箇所については、各行政区にある土木事務所が降雨前の清掃や降雨時のパトロール等を行って対応していますが、限界があります。当然ですが、清掃などの維持管理不要な街渠マス蓋は存在しません。そのため、雨水の飲み込み口である街きょます蓋の構造について検討し、改良を行いました。また併せて、バリアフリー対応も図りました。

3-2 現況の街きょます蓋と落ち葉による浸水事例
(1)現況の街きょます蓋
 ダクタイル鋳鉄製で、横浜市のき章(ハマ)を表しています(写真②)。落ち葉の多い箇所では、頻繁に落ち葉が詰まってしまいます(写真 ③)。また、グレーチングの目が粗く、バリアフリー対応となっていません。
写真2写真3


 写真② 現況の街きょます蓋                                     写真③ 落ち葉の詰まり

 (2)落ち葉による浸水事例
 平成24年6月の落ち葉による浸水の状況を示したものです(写真④)。この日は市内で最大37mm/hrの降雨でしたが、本市では50mm/hrに 対応した整備をすすめており、当地区は整備が完了している地区です。そのため管きょ自体の能力はあり、落ち葉の清掃(写真⑤)により、 浸水が解消しました(写真⑥)。
写真④ 浸水の発生写真6写真5 写真⑤ 清掃写真⑥ 浸水の解消
3-3 改良のポイント
 これまで雨水の取込みを良くするためには、蓋のグレーチングの目(開口)を多く・大きくすることが効果的と考えられてきました。しかし、雨天時に、雨水がグレーチングからますに落ちる際に、一緒に流れてきた落ち葉が、下に落ちようとする水の力によって蓋に張り付くことが詰まりの一因であることが考えられます。一枚蓋に張り付くと、その上に何枚も重なっていってしまいます。  そのため、蓋の中央部のみに目をつくって意図的に落ち葉を集め、その他の部分は埋めてしまい(開口なし)、雨水の流路を確保し、歩車道ブロックに切込みを設けて落とすことを検討しました(写真⑦)。
写真7
写真⑦ 主な改良点
3-4 試験施工(現場検証)
 結果を現場にて確認するため、平成24年8月から12月の5か月間、現場にて試験施工を行いました。葉の大きい樹木の多い公園、松の落葉が多い公園、街路樹の多い通り2箇所の計4箇所で実験を行いました。結果は、下記の通りであり、模型実験とほぼ同様な効果を確認できました。
写真8 写真⑧ 試験結果1
写真9 写真⑨ 試験結果2
写真10 写真⑩ 完成版
3-5 その他の改良点
 落ち葉対策以外と併せて、様々な機能も付加しました。
 (1)耐スリップ対策  雨天時でも、自転車などのスリップによる転倒の危険性を抑制するため、ふた表面に方向性のない独立した凸部を規則的に配列し、アスファ ルトと同等の滑り抵抗値としました。(写真⑪)
写真11 写真⑪ 耐スリップ対策
 (2)タイヤのはまり防止対策  タイヤのはまり対策には、自転車のタイヤが20mm以上沈み込むと危険であると仮定して(バリアフリー法による歩車道境界ブロックの乗り 入れ部の段差の上限から引用)、自転車が通行する領域の開口部の幅を、タイヤが入らない10mm(20mm以下)としています。  また、道路端側の大きな開口は、仮にタイヤが入っても20mm以上沈み込まないよう開口部の長さを150mm以下としています。
 (3)ふたの飛散防止対策 ふたの外れ・飛散防止として、ふたと受枠をヒンジ構造で連結しています。(写真⑫)
写真12-1
写真12-2
写真12-3
 写真⑫ ふたの飛散防止対策
 (4)T-20対応からT-25対応としましたが、リブ構造を採用し、従来品と同じ重量です。
 (5)開口断面を「ハ」型にし、清掃の維持管理性を向上しました。
 


4 きめ細かな対策(頭つなぎ(振り分け)による減災対策)

  4-1 頭つなぎ(振り分け)(横浜市金沢区金沢土木事務所の事例)(図―3)
図-3
写真13 写真⑬ H20.5.20道路冠水状況
写真14 写真⑭ ①路線「貝」閉塞状況
写真15 写真⑮ ①路線「貝」閉塞状況
写真16 写真⑯ ①路線「貝」撤去状況





4-2 対策(図-4)(図-5)
図-4図-4 対策(頭つなぎ・振り分け
図-5
図-5 対策(維持管理人孔の新設)










 


5.おわりに

 
 近年の局地的大雨の増加など、危機管理においては、想定外を考慮しつつ、効率的・効果的な対策が求められます。  荘子の物語に「屠龍技(とりょうのぎ)」というのがあります。
 昔、中国の山奥で龍が暴れていて、一人の青年が、その龍を退治すべく「龍を倒す技(屠龍技)」を身につけるため精進するが、その後、龍は二度と姿を現さなかったという物語です。一般的には、学んでも実際に役に立たない技術とされている例もありますが「龍の出現の有無にかかわらず屠龍の技を磨く。ただし龍が現れたならば一撃のもとにこれを屠る。」「災害に備えて対策を施し、常に維持管理(訓練)を重ねる。何もないことと、何もないようにしたこととは、天と地の差である。」想定外にも対処すべく、日々の維持管理、訓練を怠ることなく、いざというときには最大限の効果を発揮させる。仮にそれを使う機会はなくとも、返って何もなかったことを喜ぶ。この心構えは大切ですし、同時にハード面だけでなく、「雨水版BCP」の策定や「内水ハザードマップ策定で得られた流出解析モデルの活用」、対策や効果の「見える化」などのソフト対策をさらに充実させていくことが、今後の課題であると思います。
 特に、浸水対策における「連携」「きめ細かな対策」においては、既存ストックの最大限の有効活用、地域特性の考慮が欠かせません。これには、詳細な現場状況の把握と効果的な対策を図るための「経験値」が必要となります。「技術の継承」と同時に「経験の伝承」「歴史の伝承」そして、伝承されたものをさらに昇華させるためには、伝承を受ける側がモチベーションを高く持ち、熱き想い「魂」を「自らが感じる」「魂の伝承」が重要だと思います。「発想」し「決断(判断)」し「自分の目で見て、五感で感じて、自ら考え行動する」ことこそが、行政土木としての存在意義、やりがいではないかと思います。
 引続き、「横浜市下水道事業中期経営計画」「横浜市予測対応型浸水対策計画」の一翼を担う「積極果敢な攻めの浸水対策」を、「常在現場」の心構えで、「燃える闘魂」「横浜下水道魂」(図-6)を持って、着実に進めていきたいと思います。

横浜下水道魂
土木あさひくん
 













図-6 横浜下水道魂と土木あさひくんのデザインマンホール

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