2017年6月30日

【世田谷区】世田谷区における浸水対策の取り組み ~みんなでつくろう世田谷ダム~

 

世田谷区の概要

 世田谷区は、東京23区の西南端にあり、東は目黒区・渋谷区、北は杉並区・三鷹市、西は狛江市・調布市、南は大田区とそれぞれ接し、さらに多摩川をはさんで神奈川県川崎市と向かい合っています。区域の形は、東西約9km、南北約8kmのほぼ平行四辺形で、面積は58.05㎢あります。

 

豪雨対策の経緯

 東京都23区西部を中心とした時間100ミリを超える集中豪雨が平成17年9月4日に発生しました。世田谷区内においても、野川・仙川や下水道から水が溢れ出し、床上浸水221棟、床下浸水245棟におよぶ甚大な被害が発生しました。
 世田谷区ではこのような浸水被害に対応して、区民の生命と財産を守ることを最優先課題と考え、平成19年8月に策定された「東京都豪雨対策基本方針」や過去に多くの区民が被災した水害などの状況を踏まえて検討を進め、平成21年10月に「世田谷区豪雨対策基本方針」を策定しました。また、「世田谷区豪雨対策基本方針」で定めた目標を計画的に推進するため、平成22年3月に「世田谷区豪雨対策行動計画」を策定しました。
 しかしながら、近年の局所的集中豪雨に対処するためには、これまでの対策では十分とはいえない状況になってきました。平成25年7月には、区内でも断続的に時間60ミリを越える激しい雨に襲われ、特に上馬・弦巻地区、中町・上野毛地区を中心に床上・床下浸水が数多く発生しました。
 世田谷区では、「世田谷区豪雨対策行動計画」の策定から一定期間が経過したことや上記の浸水被害、これまでの行動実績を踏まえて、「世田谷区豪雨対策行動計画」を見直し、新たに平成26年12月に「世田谷区豪雨対策行動計画(後期)」を策定しました。

 

世田谷区豪雨対策基本方針

 世田谷区豪雨対策基本方針は、「雨と向き合うまちづくり」、「雨水をたくわえるまちづくり」、「雨水を活かすまちづくり」という3つの基本的な視点を掲げています。そして、区内全域を対象として、10年後(平成29年度)までに「概ね時間55ミリの降雨までは床上浸水や地下浸水被害を可能な限り防止することを目指す。」としており、30年後までに「概ね時間60ミリの降雨までは浸水被害を防止することを目指すとともに、区部では概ね時間75ミリの降雨、多摩部では概ね時間65ミリの降雨までは床上浸水や地下浸水被害を可能な限り防止することを目指す。」という目標を設定しました。
 
 この目標を達成するために、東京都が担う「河川・下水道の整備」の推進、雨水の流出を抑える「流域対策」の強化、また区民が自らの生命・財産を守るための備えがより一層重要となることから「家づくり・まちづくり対策」の推進と「避難方策」の強化という考え方を4つの柱として掲げています。

 

流域対策の強化

 世田谷区豪雨対策基本方針に基づき、流域対策で30年後までに「世田谷区内全域において、時間10ミリ降雨相当(約96万㎥)の流出抑制を実現する。」という目標に向けて、公共施設及び民間施設において雨水流出抑制施設の設置をより一層推進しています。
流域対策とは、流域内に雨水貯留浸透施設や雨水浸透ます等を設置して、雨水が河川や下水道に流れ込む量を一時的に抑える対策のことです。

①「世田谷区雨水流出抑制施設の設置に関する指導要綱

 世田谷区では、流域対策の強化として、公共施設だけでなく、民間施設の建築時に、雨水流出抑制施設の設置を推進していくため、平成22年7月に「世田谷区雨水流出抑制施設の設置に関する指導要綱」を策定しました。指導要綱では、「世田谷豪雨対策行動計画(後期)」で定められている対象施設ごとの単位対策量の設置をお願いしています。
 また、豪雨対策効果の早期発現を目指し、近年において浸水被害が多い地区や流域対策の効果が期待できる地区などを「モデル地区」と設定しています。その地区の公共施設の単位対策量は通常の地区より多く設定しています。


②助成制度

 世田谷区では、民間施設の流域対策の強化を図るため、「雨水浸透施設設置助成」及び「雨水タンク設置助成」を行っています。
雨水浸透施設設置助成」は、世田谷区内の民間施設に、“雨水浸透ます”及び“雨水浸透トレンチ管”の雨水浸透施設を設置に対して、助成をしています。
 助成額は、「世田谷区雨水浸透施設設置助成金交付要綱」で定めている標準工事費単価と浸透施設の設置工事に係る額を比較して、いずれか低い額の80%を助成しており、上限額は40万円としています。また、豪雨対策のモデル地区及び湧水涵養のため指定されている湧水保全重点地区については、100%助成を行っており、上限額は50万円としています。
雨水浸透施設設置助成」は、昭和63年7月より開始しており、平成27年度末までに雨水浸透ますを約12,900基、雨水浸透トレンチ管を約2,800mの助成実績があります。
 「雨水タンク設置助成」は、世田谷区内の民間施設に、“雨水タンク”を設置する場合に助成をしています。
 助成額は、雨水タンクの本体購入費及び設置に係る経費の合計額の2分の1を助成しています。上限額は設置に係る経費について5,000円、合計35,000円としています。
雨水タンク設置助成」は、平成19年7月より開始しており、平成27年度末までに雨水タンクを約450基の助成実績があります。

 
 

③世田谷ダム

 世田谷区では、「みんなでつくろう世田谷ダム」というキャッチフレーズで、流域対策について区民へPRを行っています。
 “世田谷ダム”とは世田谷区の世帯数が467,272世帯(平成28年6月1日現在)あり、仮に全ての世帯で300リットルの雨水タンクを設置したとすれば、区内全域で約14万㎥(=14万トン)の水を貯めることができ、国内にある小規模のダムに匹敵する大きさであることから名づけました。 

おわりに

 近年、世田谷区においても頻繁に集中豪雨が発生しています。
 このような状況下、世田谷区では流域対策として、平成49年度末までに約96万㎥の対策量を目標にしています。流域対策の実績として、平成27年度末までに約37万㎥の流域対策を行っており、目標対策量の38%実施という状況です。今後、目標対策量の達成に向けて流域対策を強化していく必要があります。
 そのため、「世田谷区豪雨対策基本方針」や「世田谷区豪雨対策行動計画(後期)」を推進していくと共に、今後、市民との協働事業を進めることや新工法の導入を検討していくことなど、目標対策量の 達成に努めていきます。

世田谷区土木部土木計画課 河川・雨水対策担当 大澤睦司さん