2016年11月22日

【名古屋市】大雨に強いまちナゴヤを目指して

 

東海豪雨などによる浸水被害の経験

 

 本市の浸水対策は、下水道創設期より1時間50㎜の降雨に対応する施設整備を進めており、平成27年度末現在の都市浸水対策達成率は、96.8%に達しています。
 こうした中、平成12年の東海豪雨や平成20年8月末豪雨などにより、著しい浸水被害が集中した地域や、都市機能の集積する地域を対象に、緊急雨水整備事業(以下:本事業)として、原則1時間60㎜の降雨に対応する施設整備へレベルアップを実施しています。
 この施設整備により、名古屋地方気象台における過去最大の1時間降雨量である97㎜の降雨(東海豪雨時の記録)に対して、床上浸水の概ね解消を目指しています。本事業は、主に東海豪雨を受けて立案した緊急雨水整備基本計画(以下:1次計画)と、平成20年8月末豪雨を受けて立案した第2次緊急雨水整備計画(以下:2次計画)に分けて進めています。
 本稿では、現在進めている本事業のうち、名古屋駅周辺の浸水対策を紹介します。

 

名古屋駅周辺の浸水対策

 名古屋駅は一日約110万人が利用する中部地方最大のターミナル駅で、平成39年度にはリニア中央新幹線が開通する見込みであり、周辺地域(以下:本地域)は、本市の玄関口として地下街や商業ビルなど都市機能が高度に集積した地域です。本地域の雨水は、下流の中川運河へ自然排水する地域でありますが、地盤高さが海抜約2mと低く、雨水排水としては不利な地形となっています。
 このような状況の中、東海豪雨により著しい浸水被害を受けたことから、1次計画では、被害が集中した地域を限定し、雨水貯留施設の整備をすることとしました。その後、1次計画の施設整備を進めている中、8月末豪雨により1次計画の対象地域を包含する広範囲にわたり著しい浸水被害が発生しました。そこで、2次計画では、1次計画で整備した施設を最大限活用し、広域的な対策を検討することとしました。

 

被害集中地区の雨水貯留施設の整備〔1次計画〕

 
 1次計画では、1時間60㎜の降雨へレベルアップするため、雨水貯留施設により対応することを基本としました。このため、被害が集中した地域を受け持つ排水区ごとに、必要貯留量を検討し、雨水幹線から直接雨水を取り込む雨水貯留施設4箇所(貯留量:約32,400㎥)を整備することとしました。施設計画を策定する際には、将来の大規模雨水貯留施設の流入管を先行して整備を行い、雨水貯留施設として活用することとし、ルートや流下方向などを決定しました。

 

1次計画整備施設を最大限活用した雨水貯留施設のさらなる補強〔2次計画〕

 
 2次計画では、被害が広範囲となったことから、1次計画で整備を進めている施設を含むネットワーク化を検討し、面的な浸水安全度の向上を図ることとしました。具体的には、1次計画で位置付けられている雨水貯留施設をさらに補強するために、雨水貯留施設の延伸や追加を行うとともに、大規模雨水貯留施設である名古屋中央雨水調整池によりこれらを繋ぎ、ネットワーク化を図ることとしました。
 また、雨水貯留施設への雨水の取り込みを強化する目的で、既設下水管きょを流入管として利用したり、新たに流入施設を追加したりするなどの見直しを行いました。
 さらに、排水先である中川運河の管理者と協議を重ね、運河の運用水位の工夫により毎秒10㎥の雨水ポンプ所(広川ポンプ所)を新設することとしました。
 これらの対策により、これまで地盤が低く自然排水には不利な状況であった本地域は、1次計画の雨水貯留施設などから名古屋中央雨水調整池へ導水し、毎秒10㎥連続排水を行いながら貯留する「流下貯留式」の対策が図られることにより、浸水に対する安全度は大幅に向上することとなります。

 

市民の皆さまの生命や財産を守るための自助・共助の取り組み

 これまで紹介しましたように、本市として大規模浸水対策施設の整備を進めていますが、近年頻発する下水道の整備水準を上回る豪雨から、市民の皆さまの生命や財産を守るためには、「自助」・「共助」による減災対策が重要となります。そのため、本市では、「自助」・「共助」を支援する取り組みとして、情報収集・提供といったソフト対策を進めています。
 具体的な事例として、雨水排水ポンプの運転状況や防災情報などを伝える「雨水(あまみず)情報」や、平成22年度に全戸配布した「洪水・内水ハザードマップ」の説明、簡易水防工法・雨水ます清掃の重要性のPRなどを実施し、市民・事業者との連携の強化に努めています。
 特に、「洪水・内水ハザードマップ」については、市民各自の避難行動の目安や避難所の位置、避難所への避難経路の選定を支援する情報を記載していることなどを説明し、市民の皆さまに“いざ”という時の行動を、普段から考えていただけるように努めています。

 

「大雨に強いまちナゴヤ」の構築

 下水道の整備水準を超える集中豪雨は増加傾向にあり、人や資産の集積する都市部ではその被害は甚大となります。厳しい財政状況が続く中、こうした豪雨から市民の生命や財産を守るため、既存ストックを有効活用することにより、効率的に浸水対策の効果を発現することが重要です。
 また、こうした施設整備を進めるとともに、防災部局をはじめとし、都市計画部局、道路や公園部局などとの連携や、市民・事業者の「自助」・「共助」の支援によるソフト対策など、総合的な取り組みを進め、「大雨に強いまちナゴヤ」の構築を目指していきます。

 

河合 克敏さん 名古屋市上下水道局技術本部計画部主幹


 
雨水(あまみず)情報
洪水・内水ハザードマップ