2017年8月14日

【札幌市】アクアレインボー計画によるハード対策とソフト対策の効果的な浸水対策の取組について

 

はじめに

 
 札幌市は、人口約190万人の大都市に成長しましたが、下水道事業の原点は、大正15年に市街地における雨水排除を目的としたものでした。その後、昭和47年の札幌冬季オリンピックの開催を契機として、集中的に下水道整備が進められ、平成28年度末の処理人口普及率は99.8%に達しています。
札幌市の気象は、日本海型気候で、夏季はさわやかで、冬季は積雪寒冷を特徴としており、ひと冬を通しての降雪量は、約6mにも達します。また、年間の降水量は約1,100mmと全国的にみて極めて少ないのが特徴です。

 

過去の大規模な浸水被害

 


過去の水害

 全国的にみると降水量が少ない札幌市ですが、過去には大きな浸水被害も経験しています。高度成長期の急激な都市化による土地利用の高度化や道路舗装率の増加、また雪国ならではのスノーダクト屋根の普及などにより、雨水の流出量が増え、昭和40年代以降、浸水被害が多発するようになりました。
 中でも、昭和56年8月に発生した被害は、4日に総降雨量170mm、23日には207mmという二度にわたる豪雨によって、市内各所で床上・床下浸水、道路冠水による通行止め、橋の流出、河川堤防の決壊、土砂流出などが発生する大規模なものでした。

 

下水道の雨水拡充事業(アクアレインボー計画

 
 札幌市の市街中心部の下水道計画は昭和32年に策定され、当初の雨水流出量は、5年確率降雨、雨水算定式も実験式で算定していました。その後、昭和40年代以降の浸水被害の発生状況を踏まえ、昭和53年に、以下の見直しを行った新たな計画を策定しました。
 
 ・ 雨水量算定式を実験式から合理式に改める。
 ・ 計画降雨確率年を5年から10年に引き上げる。
 ・ 雨水流出係数、流入時間等を将来の土地利用計画に整合させる。
 
 この見直しにより雨水流出量は旧計画の3~5倍となり、新たな増補管(本市では「拡充管」と呼んでいる)の整備や雨水ポンプ場の新増設、また、雨水流出抑制を目的とした浸透式下水道の整備が計画に盛り込まれました。計画区域は約13,000ha、拡充管の整備延長305㎞、雨水ポンプ場等の整備7箇所の整備計画で、雨上がりに架かるきれいな虹をイメージし、「アクアレインボー計画」とネーミングしました。
 これまでに、199kmの拡充管の整備と6箇所の雨水ポンプ場の整備が完了し、平成30年度には、現在整備を進めている東雁来雨水ポンプ場が完成します。拡充管の整備は、下流部の主要な幹線から順次進めてきたため、広範囲にわたる大きな浸水被害はなくなりましたが、上流部の準幹線の整備が残っているため、近年も局所的な浸水被害が発生しているのが現状です。全ての完成までには膨大な期間と事業費を要しますが、着実に整備を進めていきます。


平成30年供用開始予定の東雁来雨水ポンプ場と雨水拡充管

 

協働による雨水流出抑制

 


近年の水害(平成25年8月白石区)

 10年確率降雨を対象とした整備により、浸水に対する安全度が高まる一方で、毎年、10年確率を超える局所的な豪雨による浸水被害が発生しています。そこで、札幌市では、平成23年度に「札幌市雨水流出抑制に関する指導要綱」を策定し、0.3ha以上の土地に大規模な施設を設置する企業に対し、雨水流出抑制対策の実施をお願いすることとしました。
 条例による義務付けではなく、任意という位置づけですが、担当職員の懸命な働きかけと浸水に対する企業の意識の高さにより、昨年度までの6年間で計216件、抑制量にして約15,000m3の対策を実施していただきました。今後も継続して取組を進めていきます。

 

   

地下街等に対する浸水対策について

 
 平成27年に水防法が改正され、雨水出水に関する制度が追加されました。札幌市は、雪国という特徴もあり、地下街や地下鉄駅等の地下空間が発達しています。特に都心部においては、三つの地下街や地下歩行空間、地下鉄駅などの公共施設、さらにそれらに接続している民間建築物が多数存在します。地下空間においては、内水氾濫による比較的浅い浸水深でも、雨水が一気に流入し人的被害が発生することが懸念されます。水防法の改正を契機として、都心部における内水氾濫シミュレーションの実施、浸水想定区域の策定、雨水出水特別警戒水位の設定等、地下空間の浸水に対するソフト対策を進める考えです。 

さいごに

 今後の雨水対策については、地域特性や被害の影響度などを勘案し、減災の視点も持ちながら、ハード対策、ソフト対策の両面から、効果的な対策を講じていきます。
 「雨に強いまちづくり」という共通の目的のもと、行政・企業・市民が一体となって浸水対策の推進を図っていく必要があります。こうした中で、既存施設の有効活用を検討することや、適宜計画見直しを行う等、これまで下水道事業を支えてきた先人達に負けないような、知恵と工夫が必要であると感じているところです。

 
【札幌市の浸水対策事業】
http://www.city.sapporo.jp/gesui/01yakuwari/03_genkyo-2.html



【左】 谷 育美さん  札幌市下水道河川局事業推進部下水道計画課 計画係
【中央】野口 陽輔さん 札幌市下水道河川局事業推進部下水道計画課 雨水計画担当係長
【右】 高橋 徹さん  札幌市下水道河川局事業推進部下水道計画課 計画係