2017年1月4日

【さいたま市】ハードとソフトの組合せによる浸水被害の軽減効果とさらなる防災サービスの向上

 

さいたま市の概要

 さいたま市は、埼玉県の南東部に位置する県庁所在地です。古くは中山道の宿場町として発達してきた歴史を持ち、現在は東北・上越など新幹線5路線を始め、JR各線や私鉄各線が結節する東日本の交通の要衝となっています。平成13年5月に旧浦和・大宮・与野の3市合併により誕生し、平成15年4月1日には全国で13番目の政令指定都市へと移行しました。さらに、平成17年4月1日に旧岩槻市との合併を経て、現在に至っています。
 東京の北方に位置する本市は、より東京に近い市南部の方が人口密度が高い傾向にあります。特に、浦和駅西口周辺地区は、JR浦和駅及びJR南浦和駅から徒歩圏内に、小中学校や公民館等の公共施設や商業施設が立地する古くからの住宅地であり、人口や都市機能が集積しています。

 

度重なる浸水被害

 

 本市の下水道施設の整備は、昭和28年に着手し、主に都市機能が集積しているJR大宮駅やJR浦和駅の周辺において、合流式下水道により進められてきました。浦和駅西口周辺地区においても、昭和40年代から整備に着手し、1時間当たり約48㎜の降雨(概ね3年に一回発生する降雨)に対応する管路施設を整備しました。しかし、都市化の進展や集中豪雨の多発に伴い、毎年のように甚大な床上・床下浸水被害が発生するようになり、市民生活に影響を及ぼし、特に、平成11年7月の大雨(1時間当たり56㎜)では、甚大な床上・床下浸水被害が発生しています。

 

雨水貯留施設の整備効果

 

 このような甚大な浸水被害の原因は、急激な都市化により、これまで流域が保持していた雨水の浸透や保水能力が減少し、下水道施設に流入する雨水量が雨水排除能力を大きく超える状況にあったことです。そこで、本地区を含む合流式下水道区域において、1時間当たり約56㎜の降雨(概ね5年に一回発生する降雨)に対応する雨水流出抑制対策計画を事業化することとしました。
 本地区においては、大谷場2号幹線、南浦和2号幹線、谷場2号幹線の3つの貯留管を計画し、第1段階としては、早期に着手可能で整備効果の大きい貯留量2,900m³の大谷場2号幹線の整備を進め、平成15年に供用開始しています。その後、第2段階として、貯留量40,000m³の南浦和2号幹線について事業化の設計検討を始めましたが、密集市街地のため狭隘道路が多く、立坑用地の確保やシールドのルート選定などに苦慮し、ようやく平成17年に着手することとなりました。そのような中、平成17年9月の大雨(1時間当たり56㎜)において甚大な浸水被害が発生し、その後も毎年のように発生する大雨や台風により浸水被害は続き、南浦和2号幹線の早期の効果発現が期待されました。
 貯留量40,000m³もの大規模な貯留管の整備は、セグメント外径5,400㎜の急曲線施工やJR武蔵野線の横断など難しい施工条件であったため、施工中も苦難は続きました。南浦和2号幹線は平成22年度に供用を開始し、平成11年7月の大雨と同程度の規模である平成25年9月の台風においては、浸水被害が7棟に減少し、大きな浸水被害軽減効果を発揮しています。

 

自助・共助を促進するための防災サービスの向上

 本地区においては、これまでの施設整備により大きな浸水被害軽減効果を実現しましたが、いまだ浸水被害は発生しており、今年8月の台風9号においても浸水被害が発生しています。浸水被害の原因としては、台風などの長時間降雨の際に、放流先河川の水位が上昇していることであり、その水位よりも低地部の地区で局所的に浸水被害が発生しており、いまだ不安な状態が続いています。
 河川や下水道の施設整備は多くの時間と費用が必要であり、限られた財源の中で安全性を確保するためには、市民と協力したソフト対策を充実させる必要があります。平成23年度には、市民に内水による浸水が想定される区域や災害時に役立つ情報を提供し、もしもの時のために、日頃からの備えと対策をしていただくことを目的として、「さいたま市浸水(内水)防災マップ」を公表しています。今年8月には更新を行い、最新の浸水履歴等を反映するとともに、降雨時の行動の目安や多言語表記を行う等、市民にとってわかりやすい、使いやすいものに充実させました。
 また、さらにソフト対策を充実させるため、「さいたま市水位情報システム」を構築中です。水路(河川)・雨水幹線(下水道)・アンダーパス(道路)などの水位の状況、情報を一元化することにより、大雨などで対応に当たる職員の初期活動に役立てるとともに、インターネット上でリアルタイムに市民に配信することとしており、浸水被害に対する自助・共助を促進するための情報提供を行い、防災サービスの向上を図っていきます。

 

総合的な浸水対策の推進

 現在、本地区におけるさらなる浸水対策として、貯留量6,200m³の谷場2号幹線について、平成31年度の完成に向けて鋭意整備を進めています。また、「さいたま市水位情報システム」についても、平成29年4月の運用開始を目指し、市民と内水氾濫のリスクを共有し、いざという時に役立つシステムとして構築を進めていきます。
 今後も、ハード対策、ソフト対策を組み合わせた総合的な浸水対策の充実を図り、自助・共助・公助を最適に機能させることにより、浸水被害を最小限に抑える取組を進めていきます。

 


【右】上山 博久さん さいたま市建設局下水道部下水道計画課計画第1係 係長

【左】塚本 洋介さん さいたま市建設局下水道部下水道計画課計画第1係 技師


 
さいたま市浸水(内水)防災マップ