2023年8月18日
【札幌市】浸水ハザードマップの作成・公表について
1.はじめに
札幌市では、雨に強いまちづくりを目指して、全市的に10年確率降雨35mm/hへの対応を目標に、雨水拡充管(増補管)や雨水ポンプ場の整備を進めており、また近年は、下水道の整備水準を超える局地的大雨への対応として、土地の低い窪地などの浸水に弱い場所において、付近の河川へ雨水を流すバイパス管を整備するなど、地域の実情に応じた個別の対策も進めているところです。
しかしながら、近年の全国的な気象状況を踏まえると、今後は、札幌市でもこれまでに経験したことの無いような記録的な大雨が発生し、これまで進めてきた雨水拡充管などの整備によるハード対策のみでは被害を十分に軽減できない事態も想定されます。
そのため、新たにソフト対策として、1,000年に一度の規模と言われる想定最大規模125mm/hの大雨を対象とした内水ハザードマップを新たに作成し、既存の洪水ハザードマップと統合した『札幌市浸水ハザードマップ』として令和4年3月に電子版を公表しましたので、今回、ハザードマップ作成にあたり工夫した点についてお話しさせていただきます。
窪地などへの対策イメージ
浸水ハザードマップ
2.ハザードマップ作成にあたり工夫した点
(1)既存流出解析モデルを活用した浸水シミュレーションの実施
浸水想定区域図を作成するには、まず浸水シミュレーションを実施するために流出解析モデルを構築する必要がありますが、今回は、本市の河川部局が構築していた既存の流出解析モデルを活用することにより、比較的短期間で、市域全体(計画区域約25,000ha)を対象とした下水道・河川一体の解析を行うことができました。
想定最大規模降雨125mm/hによる浸水シミュレーションを実施した結果、約4割の区域で浸水が想定されましたが、浸水深は最大でも3m未満であり、一般的な住宅の場合は2階以上への垂直避難により安全確保が可能でなることがわかりました。
(2)洪水ハザードマップとの統合
札幌市では、既に洪水のほか、地震、津波、土砂災害といった数多くのハザードマップを作成していることから、今回作成した内水ハザードマップについては、市民の利便性の向上や水害に対する理解促進を目的に、洪水ハザードマップと統合し、それぞれの浸水想定区域図を並べて掲載した、A4判の冊子タイプで作成しました。
表紙
(内水氾濫と洪水の特性を解説)
浸水想定区域図
(左側:内水氾濫 右側:洪水)
(3)浸水危険度を示す配色の設定
浸水の危険度を示す配色については、内水氾濫と洪水の浸水規模の違いを明確に示すことができるように、比較的浸水深の浅い内水氾濫については緑や青、浸水深が深く甚大な被害をもたらす洪水については黄や赤を中心として設定しました。
また、人によって色の感じ方が異なることへも配慮し、疑似的に色の見分けにくさを体験できるフィルタを使用することにより、できるだけ多くの人に見分けていただける配色を心がけました。
色弱疑似体験フィルタ
フィルタによる色の確認
(4)避難方法チェックシート
巻末には、市民が浸水の危険度に応じた避難方法を確認できるよう、わが家の防災メモを設けました。
わが家の防災メモは、チェックシート形式により、自宅で想定される浸水の深さなどを確認することで、在宅避難が可能であるのか、もしくは避難所などへの避難が必要となるのかを判定できる構成としており、是非、ご家族などで話し合いながら、活用していただきたいと考えています。
また、わが家の防災メモについては、切り取り線を設けており、冷蔵庫など、日頃から目につきやすいところに貼り付けられるようにしています。
(5)町内会ごとのハザードマップの作成
浸水ハザードマップは、10の行政区ごとに、A4判の冊子タイプで取りまとめましたが、地域の集会所や事業所で掲示、町内会などで行われる大雨を想定した図上訓練など、地域の防災活動にも積極的に活用していただけるよう、市内に約100ある連合町内会ごとにA3判1枚で取りまとめたハザードマップも作成し、札幌市公式ホームページ上で公開しました。
わが家の防災メモ(巻末)
町内会ごとのハザードマップ
3.さいごに
浸水ハザードマップは、より多くの市民の方に手に取って確認していただけるよう、令和3年度に電子版で公表した後、令和4年度には、印刷物を市内全戸へ配布しました。
今後は、学校や町内会などの地域の要望により実施する浸水対策に関する出前講座や、市公式SNSなどを活用してハザードマップの更なる普及に取り組んでいきます。
https://www.city.sapporo.jp/kikikanri/higoro/fuusui/ssh_map.html
札幌市下水道河川局事業推進部下水道計画課
計画係 伊藤 賢吾